IT業界で働いて何十年にもなりますがたまにでかい爆弾を爆発させる時があります。今回は誤ってあるユーザーの過去のメールデータ大半を完全削除してしまいました。しかも気づいたのが結構時間経ってからでした。
「ぐにゃぁ～あああ！こんなことが…こんなことが自分に降りかかるなんて…！助けて！嘘だろ？なんたる愚行！」と後悔してもデータは戻ってきません。さぁどうしましょう？あきらめかけたその時、一筋の光が差し込んだのでした。
“完全削除”の定義を間違えていた…
私がイメージしていた完全削除とExchange Onlineでの完全削除の間には認識の相違がありました。私がイメージしていた完全削除はOutlookの「削除済みアイテム」内のデータを削除したら完全削除だと思っていました。しかしそれはExchange Onlineにとってはまだソフト削除にすぎなかったのです。つまりデータは消えていませんでした！
「削除済みアイテム」内のデータを削除すると、「Deletions」フォルダへ格納されます。まだ完全削除されていません！これは助かった！と思ったのですが条件がありました。「14日経過するとDeletionsから完全削除される」のです。もう復元はできせん。おおお…人生オワタよ＼(^o^)／「削除済みアイテム」から削除して14日以上は余裕で経過しているのよ…。期待させといてそれはないわよーー！！
しかしまだ希望の光はありました。訴訟ホールドがONの場合、また「単一アイテムの回復」がONの場合は「Deletions」から「Purges」へ移動する仕様なんです！
PowerShellで設定を確認する
これらの設定がどうなっているかExchange管理画面からは確認できません。PowerShellを使用することになります。
訴訟ホールドはONになっているか？
Get-Mailbox papa@papamamameyou.com | Format-List LitigationHoldEnabled
LitigationHoldEnabled : False訴訟ホールドはONになっていませんでした（涙
「単一アイテムの回復」はどうなっている？？
Get-Mailbox papa@papamamameyou.com | Format-List SingleItemRecoveryEnabled
SingleItemRecoveryEnabled : Trueよっしゃーー！「単一アイテムの回復」はONになっていました！もう少し詳細を見てみます。
Get-MailboxFolderStatistics papa@papamamameyou.com -FolderScope RecoverableItems | FL Name,FolderAndSubfolderSize,ItemsInFolderAndSubfolders
Name : Recoverable Items
FolderAndSubfolderSize : 1.91 GB (2,050,893,689 bytes)
ItemsInFolderAndSubfolders : 7381
Name : Audits
FolderAndSubfolderSize : 7.192 MB (7,541,144 bytes)
ItemsInFolderAndSubfolders : 1425
Name : Calendar Logging
FolderAndSubfolderSize : 752 KB (770,040 bytes)
ItemsInFolderAndSubfolders : 156
Name : Deletions
FolderAndSubfolderSize : 17.61 MB (18,466,636 bytes)
ItemsInFolderAndSubfolders : 38
Name : DiscoveryHolds
FolderAndSubfolderSize : 43.85 KB (44,899 bytes)
ItemsInFolderAndSubfolders : 26
Name : Purges
FolderAndSubfolderSize : 1.813 GB (1,946,168,935 bytes)
ItemsInFolderAndSubfolders : 5286
Name : SubstrateHolds
FolderAndSubfolderSize : 29.45 MB (30,881,697 bytes)
ItemsInFolderAndSubfolders : 346
Name : Versions
FolderAndSubfolderSize : 44.84 MB (47,020,338 bytes)
ItemsInFolderAndSubfolders : 104やった！「Purges」にメールデータがかなりの容量保存されていますね！これを復元すればいいんですね！
ちなみに説明を加えますと「Recoverable Items」がルートフォルダになります。その配下に「Deletions」や「Purges」フォルダがあります。それらは「Recoverable Items」のサブフォルダにあたります。他のフォルダ(Audits, Calendar loggingなど)に関しては説明を割愛いたします。
復元方法
復元もPowershellで行います。Microsoft Purview管理画面から「コンテンツの検索」を利用してもできますが今回は割愛いたします。
まずはDeletionsフォルダ内のデータを復元します。オプションSourceFolderに RecoverableItems を入力します。
Restore-RecoverableItems papa@papamamameyou.com -SourceFolder RecoverableItems -ResultSize Unlimitedそして最後にPurgesフォルダ内のデータを復元します。オプションSourceFolderに PurgedItems を入力します。
Restore-RecoverableItems papa@papamamameyou.com -SourceFolder PurgedItems -ResultSize Unlimited実行するとすぐに反映されます。復元できましたーーーーー！神が舞い降りたっ！見捨ててなかった！神はワシを見捨ててなかったっ！
注意点
復元できましたが、注意点があります。復元されたメールデータはすべて「受信トレイ」に復活します。以前不要で削除したメールでも復活してきます。
しかも既読・未読も記憶しています。以前既読・未読にした状態のまま復元されます。あまり既読にしないで削除するタイプの人は地獄です。受信トレイに未読アイテムがもの凄い数復元されるからです。
メールが見にくくなるため、「コンテンツの検索」からメールデータをダウンロードしてクライアントからpstファイルを読み込む方が良いと思う人もいるかもしれません。
まとめ
訴訟ホールドがONの場合、また「単一アイテムの回復」がONの場合は「Deletions」から「Purges」へ移動するので救い出すことができる！
一時は本当に人生オワタ気分でした。ユーザーさんにはご迷惑をおかけしました。申し訳なかったです。
ちなみに「Purges」の中にあるメールデータはいつまで保管されているのでしょうか？何かイベントが発生して削除されるということが起こりうるのでしょうか？「Purges」の中身が削除されないか心配で夜も眠れません。
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